ともだち

前にいた職場で

唯一心をひらける友達がいた。

 

(「前に」とか過去形になっちゃってますが、なんと

入社4ヶ月、早々に会社を辞めてしまいました。)

 

それは中国人のパートのおばちゃんでした。

彼女と話すときは心から笑顔でいられた。

 

休憩の時間が近づくと、“まかない”を自分で作る。

もたもたして怒られないように

短い時間でできるものを適当に作って、そそくさと出て行こうとすると

おばちゃんが、私のためにおかずをもう一品用意して

こっそりと渡してくれた。

野菜がないの、気づいてくれてたんだ。

まえに「最近、痩せたんじゃない?大丈夫?」って

声をかけてくれたことがあって

身体を気遣ってくれる優しさに涙が出そうなのをこらえて

つたない笑顔をかえした。

 

最後の勤務の日。

お客さんに出す規定の量の倍くらい

いっぱいに盛ったどんぶり料理を手渡してくれた。

退勤した後は、ふたりで待ち合わせて中華料理の店に夜ご飯を食べに行った。

「ごちそうしてあげるから」という

おばちゃんの優しさに思い切り甘えた。

 

 麻婆豆腐も棒棒鶏も、わりとしっかり辛い・・・!

けれど、暑い夏にはスカッとする爽快な辛さだった。

紹興酒」という中国のお酒の飲み方を教えてくれて、

最初は、味がよくわかるように常温で飲むといいって。

甘みがあって濃ゆいお酒だった。

  

おばちゃんが、小さなメモ帳を取り出してなにやら書き始めた。

酒逢知己千杯少、話不投机半句多。

「気心の知れた人と飲む酒は(千杯でも少ないくらい)いくらでも飲める。

でも、気の合わない人との話は少しでも長く感じる。中国のことわざ」と

丁寧に意味を説明して、

「あなたに出会えて良かったわ」と言いながらそのページを私にくれた。

 

以前、おばちゃんが職場の若い女の子から

明らかに不当な扱いを受けていたことがあった。

見ていてさすがに黙っていられず、店長に相談のラインを入れた。

私はもう、どうなったっていいんだ。

私が守る。守るぞ。

 

その後、

私から伝えておきました、店長も理解してくれてるので安心してください、

とおばちゃんに伝え、

返事が返ってきた。

「あなたが居てくれるからここで働く理由があるわ!心からの嬉しいわ。

日本語上手くないから、言いたいことうまく伝えない。」

ゆっくりと時間をかけて文字を打ってくれたんだろうな。その姿を想像した。

 

 

おばちゃんは旦那さんと二人暮らしで、ずっと子供はいないらしい。

娘のように思って可愛がってくれたのかもしれない。

 

おいしくお酒が飲める友達になってくれてありがとう。

こんどは横浜中華街に一緒に行こうね。